お見舞い

2023年10月24日

きのうは夕焼けがうつくしかった。

秋は空がもっとも綺麗な季節なのかもしれない。

市役所に行って、

正式に旧姓に戻る手続きをしたことを

入院中の母に報告すると、

母は祝福してくれてこういった、

きのうはほんとうに夕焼けが綺麗だったわよね、あのね、

リハビリしてくださる理学療法士さんが

車椅子を押してくれて

空がひろく見える場所に案内してくれたのね。

夕焼けがほんとうに綺麗で、それで向こうのほうに富士山が見えて。

その理学療法士さんにお礼を言うとね、

わたしも見たかったですから、みたいなことを言って。

母に素敵な景色を見せてくれたその方に感謝。

こうして、素敵な報告を届けてくれたことが嬉しい。

あのね、頼みがあるの、と母。

何か欲しいものでもあるのかなあ、と思ったら、ロビーの雑誌や新聞が古いものばかりなので、

なぜ、古いものばかり、というと、お見舞いのひとが持ってきてくれたものを

こうして取っておくんですよ、と仰って、

もしできたら、読み終わった雑誌があったら、

読むのにじゃまにならないあまり重くないものがあったら、ぜひ持ってきて欲しいの、

というので快諾する。

さて、お見舞いを終え、帰りにいつもの喫茶店でサンドイッチを食べて帰り、

家の中の本棚に目をやる。

バードウォッチングの雑誌がいいかな、と思っていたが、

ほとんど処分してしまったようだ。

これを持って行こうかな、と、小鳥の写真集を手にとり広げる。

でも、たいせつな本なんだけどな、と思い、

絶版になっていなければ、と、アマゾンでチェックすると在庫ありとのことなので、すかさず注文。

「野鳥美を求めて」と「野の鳥の四季」の二冊を。

母にも、ほかの患者さんにも、スタッフさんにも、それから、

このあいだご挨拶にいらしてくださった院長先生にも、是非ご覧になっていただきたい、

小鳥たちの愛らしい姿がつまった写真集。

鳥さんの写真集を買いました、明後日、持っていきます、と母にメール。

人生って、つらいことばかりじゃない。

こんなささやかなことが

信じられないぐらい豊かに溢れているのだから。

綺麗な夕焼け、小鳥の写真集、理学療法士さんの温かな気遣い。

それらが彩っている、一見したところ何もないかのように見える、あるいは

ただ繰り返されているかのように感じられもする日常を。

まるで、この世の宝をあつめたかのように。