恩師への手紙

2022年11月09日

ややイライラした日、

花を買う。

ふくよかな黄のバラに青い花を添え

オリーブの枝のもとに生ける。

母がキレると

わたしもキレてしまう。

台所でけんかして

二階へ上がっていく途中で

アイスクリームを持ってくるのを忘れたことに気づき

階段の途中で足をふみはずし、そのまま下まで落ちて足を打った。

痛みに耐えながら起きあがりその日は早く寝た。

良い夢とわるい夢とをみてから

まだ朝日のさわやかな頃に目をさます。

紅茶を飲んでいると

やや気分がなだらかになってくる。

母とも仲直りできそうだ。

書きかけの手紙があったのを思い出して、つづきを書こうと思い立つ。

わたしのもっとも尊敬するひとの一人で、

教師の仕事をしていたころたいへんお世話になった先生、

そのひとに手紙を書く。

ご無沙汰していたからこの気持ちはたった一ページではとても伝えきれない。

本音を言えるとはすごいことだ、

お世話になったことへのお礼をまず述べて

近況をありのまま綴っていくとまるで

閉ざされた空間に

開け放った窓から新しい風が吹き込んでくるかのようだ。

なんども読み返して封をして

小鳥の絵の記念切手をひだりうえに貼りつけ

外に出る。

歩くとまだ足が痛いので遠出はやめよう、表通りの赤いポストのすきまに手紙を投函すると

引き返してそのまま

二階へいってちゃんと届くようにと願いながら窓辺の花を見やる。

ちょっとつまづいたぐらいじゃ、わたしはくじけない。

もうずいぶん寒いというのに

トンボが飛んでいて

羽根を休める場所をさがしている。

枝のさきに止まったとおもうと、透きとおる羽根をまたひろげゆく。

きのう買っておいた材料があるから、それをつかって何かつくることにしようか。